GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

seeking for my another sky─それは、この世界そのものだと気付いた

動画:長編ドキュメンタリー『ZEITGEIST III』の視聴記録Ⅲ(ブログ版)

RESOURCE-BASED ECONOMY(資源ベース経済)
製作:ジェントル・マシーン・プロダクションズ(GENTLE MACHINE PRODUCTIONS)
監督:ピーター・ジョーセフ(PETER JOSEPH)

ZEITGEIST Ⅲ : MOVING FORWARD 時代の精神』視聴の全記録Ⅲ 

第三章(続き)
プロジェクト・アース(PROJECT EARTH)

この運動が提唱する経済モデルは、70年代の構造工学研究者ジャック・フレスコの定義から生まれた考え方で、「資源ベース経済」(Resource-based Economy)と呼べるものらしい。

フレスコは、自然と社会が衝突するのは不可避であると説いていた。

運動の思想的始祖ともいえるジャック・フレスコは1974年のTVインタビューでこう述べている。「これらのことは、全て実現が可能だ。地球は10年で作り替えることができる。選択するのはあなたがただ」と。そして解決を政治に求めるのは愚かなことであると。

フレスコは、Zeitgeistプログラムを運営するVenus Projectのディレクターであもるらしい。その彼は「科学とは世界が動く仕組みを推定することである。科学は真実とは何かを語るものである」と述べている。

「資源ベース経済」の理念は、社会問題に対して科学的手法を適用することで成り立つ。この純粋に科学的なアプローチが、現代社会に全く欠けているらしい。政治や金融経済では、最も効率的に資源と生産を循環させる方法は設計しえない。それは科学と技術の領分であると。

社会とは技術発明の一つで、飛行機を製造するような体系的な方法で運営されるもの。そこに政治的思想が入り込む余地はない。自然は固定のシステムであり、我々の理解が進むたびにその全貌が明らかになるだけ。我々の主観的な「真実は」、自然にとっての事実ではない。

自然は専制的である
NATURE IS A DICTATORSHIP

「自然は専制的である」(Nature is a Dictatorship)。我々はそれが奏でる美しいハーモニーに聴き入ることはできても、それに抗って生き抜くことはできない。「資源ベース経済」は、科学的に立証された事実に基づき持続可能な社会を構築する。

「資源ベース経済」の根幹にあるのはそれが「いのちを守り支えることを中心に置いたシステム(life ground system)」であること。政治や宗教、思想などの文化の比較的優位主義に依らない、人類の普遍的価値である「いのち」に基づく考え方である。

人類という種の自己保存のため、人類社会は、きれいな空気、水、食料など必要なものを手に入れることができ、暴力に怯えることなく安心して子供を育てることができ、精神的肉体的な健康の維持が可能で、人類全体としての進化に適合した環境を必要としている。

「私が提唱する包括的システムアプローチでは、まず居住する地域にある資源について確認を行い、その地域から何が産出できるかを見極めることを要とする。構造的アプローチでも、設計的アプローチでもない。人間の生活を向上させることに最大の主眼を置く。これが私の一貫した考え方である。食糧、衣服、住居、温暖な環境、愛情…すべて人間が生きることに必要なものである。そのどれであっても、それらを得る機会を人々から奪うことは、その人々を機能不全な人間、すなわち人間扱いしていないことになる
─『VENUS PROJECT』のディレクター、ジャック・フレスコ(工業デザイナー)
JAQUE FRESCO, INDUSTRIAL DESIGNER
DIRECTOR, THE VENUS PROJECT

都市設計
CITY DESIGN

「資源ベース経済」とは、資源の調達、製品の生産、製品の流通を論理的かつ体系的に捉え、真に経済的なメカニズムを構成するパーツからなる。生産は戦略的な保全、安全、効率性を重視して行われ、流通は戦略的近接に基づいて常にアクセス可能な範囲において行われる。

この資源ベース経済を実現する一つのモデルとなるのが、都市設計。

都市設計において肝要なのは基点に沿って等距離に必要な施設を配置することだ。すなわち円形が最も理想的な形となる。この円の中に、電力、住居、生産、農業、文化、自然、娯楽、教育を環状的に配置する。

資源ベース経済を実現したモデル都市について、延々と見事なCGで作られた都市設計が披露される。これは自分の目で見たほうがいい。1:53:25辺りかの映像は必見。まさに未来都市の具体的設計がどのようにモデリングされるべきかの見本のようだ。素人考えだが。

農業生産
AGRICULTURE
未来の工場型食糧生産構想を展開。土の要らない水耕栽培や空気栽培により、現在の75%まで栄養剤などの必要性を削減し、タワー型の農業地帯を構築して効率的かつ清潔、豊富に収穫が行える未来図を紹介。1:54:10辺りから。
エネルギー
ENERGY

肝心の電力供給システムについては、風力・太陽光・地熱・気温差・潮力・波力などの再生可能エネルギーを統合的に利用した統合的発電システムを都市設計段階から組み込む構想を展開。余剰電力は地下に蓄積し、常に蓄えを絶やさないで有事に備える。

生産
PRODUCTION

当然ここで疑問がわく。どこにそんな高度なシステムの設計・開発・運営を可能にする技術や資源があるのか。あるのである。

労働の自動化
MECHANIZATION OF LABOR

その要となるのが、労働の自動化(Mechanization of Labor)といわれている手法にある。現在の大量生産手法そのもの。

最新鋭の自動化された生産システムは、製品の生産のためのみ使用されている。1つの工程で完全な製品を作り上げる手法は現代においてすでに確立されている。この生産技術と最新の3次元印刷技術を組み合わせれば、家の建築すら全自動で1日可能になる。─ベロック・コシュネビス博士、工業システムデザイン、USC

この労働の自動化により、一部失業の問題が浮上するが、たとえば建設業はもっとも死亡率の高い職業の一つだといわれている。これが自動化されると、人間資産が失われなくなるという利点がある。次に、労働の完全な自動化はゴミをも最小化し、無駄を徹底期に排除する。

技術革新による失業
TECHNOLOGICAL UNEMPLOYMENT

労働の完全自動化により、生産性が高く、コストが安く、効率的で、持続可能な労働力を人類社会は手に入れる。機会には福利厚生が必要なく、24時間稼働する。人間の労働者の生産能力と精密さは比較にならない。自動化は、現在世界中でみられる失業率増加の要因でもある。

経済学者たちは長年、この技術革新によって生じる失業「技術革新による失業」(Technological Unemployment)について語ってこなかった。ここで生じた失業は、新たな分野に吸収され、労働市場が循環しているかのように「思われていた」からだ。

現在、人間労働者に残された唯一のハブ産業といえるのはサービス産業のみ。少なくともアメリカでは労働人口の80%以上がこのセクターに属している。他の先進国においても、同様の傾向が見られる(日本は?)。

そして、経済学者が語ってこなかったことがもう一つある。それは、失業率の増加を悪化させている要因が2つあって、いずれも技術革新によるものであるという事実である。

1.生産・コストの効率化を求める企業は自動化を促進し、労働者を解雇する
2.不況が深まるとこの傾向を強め、さらなる失業率増加に繋がるという循環

この「技術革新による失業」の落とし穴として企業が理解できていないのは、自動化を進め、人を切り捨て、更なる自動化を進めることで、結果的に消費者の購買力を削いでいることだ。いかに安く効率的に製品を作っても、それを購入する消費者も安いものしか買えなくなっているのだ。

資産ベース経済が導入され労働の自動化が実行されると、世界の労働人口の75%が機械にとって代わられ、金融・市場経済システムが不要となる。金は必要がなくなり、存在しなくなる。
(ここの転換がよくわからない。なぜ労働が自動化すると市場経済が消滅するのか)
2:03:40から話が都市設計に戻る。都市の中央のドームには、都市中枢機能の全てが含まれる。すなわち都市のメインフレームである。都市そのものが一つの大きなマシーン。つまり無機生命体というところか(999の「好奇心という名の星」を思い出す)。

この全能とも思える全自動型複合機能都市は、通常の都市人口の約3%の人間が関われば十分に稼働し、機械の誤動作などの万が一の事態にも備えられる。その前提には次のことがある。

Zeitgeist運動は、この機能性溢れる都市を構築できるような経済システムがあれば、次のことを保証できると断言する。

借金というものは、そもそも存在しない、市場原理の帳尻を合わせるために創られたモノに苛まれながら、企業という私的な専制者に日々搾取されることのないよう、個人の健康や生活を保障し面倒を見る経済システムが実在したならば、個人は自ら積極的に、そのシステムを運営し改善するための協力を惜しまないことだろう。

文化の犠牲者
VICTIMS OF CULTURE

INCENTIVE

こうしたインセンティブをベースとした経済システムの維持・改善というのは、利己的で怠慢な人間の本質に反した夢想であるとする批判が想定される。だが個人の自己保存を最も合理的に実現するシステムがあり、その維持に人の手が必要だと思えば、動くのではないだろうか。

犯罪
CRIMES

資産ベース経済のシステムが構築され、金融・市場経済が崩壊することで、人の生存を脅かすもう一つの要素が劇的に削減される。犯罪である。全世界で発生している犯罪の95%が窃盗・横領・詐欺など全て金絡みなのだから、この95%が丸ごと消滅すると考えるといい。

暴力
VIOLENCE

残りの5%の犯罪には暴力が関わってくる。ではこの暴力は純粋に道徳的に「悪」であるという価値判断で断罪してよいものなのか。

「暴力行為の予防に必要なものは何か。暴力を引き起こす構造の理解である。すなわち、暴力が起こる環境そのものを変えれば、暴力は発生しない。
─ジェームズ・ギリガン博士(元ハーバード医学校暴力研究センター所長)
DR. JAMES GILLIGAN, FORMER DIRECTOR, CENTER FOR THE STUDY OF VIOLENCE
HARVARD MEDICAL SCHOOL

「個人の選択と、選択の自由について理解すると、選択の自由とは即ち”影響を受けずに選択を行う”ことを意味することがわかる。しかし我々は文化に影響される。だから”選択の自由”は存在しえない。我々は常に、自らの属する文化の犠牲になっている」
─ジャック・フレスコ