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コラム:米英の「ホットドッグ外交」の成果に学ぶ過去の清算の仕方 ~映画『私が愛した大統領』より~

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「ホットドッグ外交」という言葉をご存じだろうか。

二次大戦での英参戦前夜、英国王ジョージ6世は王妃エリザベス1世とともに密かに米ルーズベルト大統領の私邸を訪れた。英国王として初めての訪米だ。この異例の訪問には明確な目的ー国運を懸けた使命があった。

アメリカの支援を確保することだ。

英国王夫妻を迎えるルーズベルトは正直、大不況に喘ぐ国情に接し参戦に否定的だった。そのため、大統領は何かと策を弄して、英国王夫妻を怒らせる戦術に出る。「ホットドッグ」も、その作戦の一つの筈だった。夫妻をピクニックに招き、そこでホットドッグを夫妻に振る舞うというのだ。

しかしピクニックの前夜、ルーズベルト邸に滞在した人間はみな眠れない夜を過ごす。ルーズベルトも、ジョージ6世も同じだった。国王はまだ使命を達していなかった。その夜遅く、ルーズベルトは国王を書斎に招き、二人は腹を割って語り合う。まるで、長年の確執からやっと打ち解けた親子のように。

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こうして腹を割って本音 (使命) を明かした英国王に対し、ルーズベルトを真摯にこれを受け止め、戦争支援を約束する。だが、まだ課題があった。大不況のなか旧宗主国である英国に支援することをどう米国民に納得させるかだ。

そんな思惑が交錯するなか、夜が明け、ピクニック当日を迎える。

このピクニックは、史実としてはルーズベルトの妻、エレノアが提案したとされているが定かではない。ピクニックではアメリカ先住民インディオの伝統的な躍りが披露され、いよいよ、現場の人間が待ちにまった瞬間が訪れる。

英国王にアメリカの庶民の味、ホットドッグが振る舞われる瞬間だ。

目の前にできたての素のホットドッグを差し出される英国王ジョージ6世
"その瞬間"を固唾を呑んで見守る大統領の友人ら。

王妃エリザベスは夫に「食べるんじゃないでしょうね?」と釘をさしていた。しかしその夜、国王は旧植民地で今は大国のアメリカ大統領と男同士の話をしていた。果たして…?



食べた!



英国王はなれない手つきで一口、ホットドッグの端を、しかし大きく、噛み千切った。その瞬間、沢山のフラッシュが焚かれ、割れんばかりの拍手が起きる。

国王は「なぜたったひとかじりしただけで拍手が?」とキョトンとした様子。ルーズベルトも同じく拍手しながら、「よくやった」と囁く。

この「ホットドッグ」は一種の踏み絵のようなものだった。

食べる直前、大統領は国王に「こうして食べるといい」と食べ方をアドバイスする。その時、若い英国王は「あなたのいうとおりの食べ方で食べます」と、"絶対服従"を誓い、その通りの方法で食べた。アメリカの庶民食を。

このことがきっかけで、アメリカはのちに戦争を支援し、欧州戦線に参戦して戦争特需で巨万の富を蓄え、超大国として君臨するようになる。この「ホットドッグ」外交のおかげで、歴史の因縁の呪縛を離れ今日まで続く米英同盟が築かれたという逸話。ちゃんと記録フィルムまである。

――というのは、全て実話をベースにしたこの映画『私が愛した大統領』(2012年)で描かれたエピソードの一つ。物語の核は、大統領と不倫関係にあったある女性の恋だが、その女性の綴った日誌と実在した記録フィルムの映像をもとに物語が構成されていた。


映画『私が愛した大統領』予告篇


「ホットドッグ」外交は、歴史上の事実だ。

米英はかつて、独立を巡り大規模な戦争を経験した。一時は宗主国と植民地という力関係だったものが、いまや対等以上に緊密な外交パートナーとなっている。

「ホットドッグ」外交は両国に苦渋の選択肢がありながらも、両者が英断することでこれを乗り越えた例。

このことから現代の日本が学べることは、沢山あるのではないか。

(今日の連投ツイートより)