外交:普天間返還で海兵隊移転が先行することの「意味」
「先行移転」の意味を論じないメディア
国内メディアが、日米が在沖縄海兵隊の先行移転に大筋合意した「意味」を論じないことを不思議に思う。当初合意の約半数(4,700名)を先行移転するということは、当然、合意費用の約半額の先行拠出が生じることになる。拠出済みの約900億円の上に相当額が上乗せされ支払いを要請される。この「意味」だ。
米上院外交委員会東アジア・太平洋小委員会委員長を務めるジム・ウェッブ(James Webb)上院議員は、大統領選の最中に行われた今回の合意について議会でグアム移転が議論されるのは「1~2年先になるのでは」と見ているという。
「…11月予定の大統領選を念頭に「(辺野古移設を含め)グアム移転
が本格的に議論されるのは1~2年先になるのでは」―ウェッブ議員
(11日付け沖縄タイムス)
また議会の審議が先送りされ結論も出ない状況にあって、日本政府は合意額の半額を一挙拠出するのだろうか?あるいは、全額か?
問われる国会の法案審査能力
肝心なのは、もし政府が先行拠出を検討してグアム協定の改訂と批准の国会承認を求めるのであれば、国会議員の法案審査能力が問われるということだ。
これが海兵隊が先行することの「意味」である。
野党時代、民主党の多くの議員は協定承認に反対したが、立場逆転して与党となり、党議拘束がかかれば今度は賛成する側に回ることになる。報道によれば、政府は今国会中に日米間の見直し協議を終え、国会に改訂されたいわば「新グアム協定」を提出する可能性があるという。
「今後の日米協議で見直しが確定すれば、それを反映した条約の
批准のため今国会で審議される可能性がある。」(9日付け朝日新聞)
国会議員の責務
これが「移転」費用の全額或いは「ロテーション」を含めた全額の費用拠出の先行支払いを求めるものであるならば、国会議員はこれを容易に承認してはならない。
日本は未曾有の自然災害からの復興財源の確保を目指し、また経済浮揚のため、増税を余儀なくされようとしている。無駄な支出を一切避けなければならないこの現状にあって、「旧グアム協定」で「旧自公政権」が犯した愚と同じ轍を踏むことは許されない。
国会議員にはこの意識が必須である。
党議拘束により政府提出の閣法に賛成する義務を負う与党議員らは、我が国の現状にあっては合理的でない財政支出を行っている余裕はないことを肝に命じ、予算承認の責任と義務を至上の義務として捉え、真摯な姿勢で新グアム協定の法案審査に臨み、予算合理化の義務を果たして頂きたい。
単に与党であるという理由のみで政府閣法に賛成することしか能がない国会議員など不要。
とくに予算が関わる外国との取引に係る法案の審査であれば、米議会の与党を見習って是々非々で、法案によっては党が割れるようでも、国会議員としての信念を最前に持ってくる覚悟 で法案審査には臨んで貰いたい。
有権者としての姿勢
そして我々有権者も、メディアの情報に踊らされずに冷徹に国会議員が何を為すかを自らの価値判断で監視し評価する意識が必要である。今年中にも総選挙があるのなら尚更、今国会を我々有権者がどう見て、評価するのか。総選挙の前哨戦はもう始まっているのだ。
その緊張感で今後の国会審議を注視しよう。