非核:(下)安保理首脳会合決議、非核兵器地帯普及の呼び水となるか
鳩山総理が『北東アジア非核兵器地帯』構想をこうした場で発表する日も近いかもしれない。
他の非核地帯条約追加議定書批准の推進
現在、世界には5つの非核地帯が存在し、いずれも条約として発効・成立している。ただし、その5つの中で、核保有国(5大国)に対する拘束事項が含まれる追加議定書も含めて発効しているのは、1967年採択のトラテロルコ条約(ラテンアメリカ及びカリブ地域に関する非核兵器地帯条約)のみで、その他の条約の追加議定書は依然として発効していない。これは、核保有国の反対によるものが大きかった。各地域・非核地帯条約別 追加議定書の批准状況
条約名 | 米 | 英 | 仏 | 露 | 中 |
1967年トラテロルコ条約(ラテンアメリカ及びカリブ) | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
1985年ラロトンガ条約(南太平洋) | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
1995バンコク条約(東南アジア) | × | × | × | × | × |
1996年ペリンダバ条約(アフリカ) | △ | ○ | ○ | △ | ○ |
2006年セメイ条約(中央アジア) | × | × | × | × | × |
日本外交の新機軸としての「支え合う安全保障」構想
今回の決議に最大限の意味と実効性を持たせるためには、まず核保有国によりこれら未署名・未批准の追加議定書に対するアクションが起こされる必要がある。これらのアクションを先ず起こすのはオバマ大統領率いるアメリカだと思われるが(おそらくラロトンガ条約への批准)、いまの機運ならば他の核保有国も同様に倣わざるを得ないだろう。そうして、いわば「非核地帯条約体制」とでもいうものが確立されてゆけば、第6の非核地帯条約として『北東アジア非核兵器地帯条約』の条約交渉を推進することも難しくなくなるだろう。勿論、それには様々な要件が揃う必要があり、日本外交が朝鮮半島のみならず北東アジアすべての非核化を真に目指すのであれば、対北朝鮮外交、対中・対韓外交は言うに及ばず対米関係も含めて、その全ての努力がこの目的に注ぎ込まれるべきである。非核地帯条約交渉という大きな枠組みの一環として、対北・対中・対韓・対米外交を考えれば、いままで見えてこなかったリンケージ等が見えてくる。日米関係という、一つの極ではあるが二国間のみの軍事同盟という枠組みとそれに連なるリンケージを考えるのと、共有型安全保障(Shared Security)という大きなグリッドの中で多国間での枠組みを考えるのとでは、思考の幅と柔軟性が違ってくる。北東アジア全体の共有型安全保障(鳩山総理の言葉では「支え合う安全保障」)を考え、これを軸に対アジア・対米外交を展開すれば、日本は必ず新たな基軸となる独自の安全保障戦略に辿り着くであろう。今回の決議採択がその呼び水となることを切に願うものである。
(了)