祈念コラム:日本に原発を管理する資格はない
Japan’s nuclear regulators and the plant’s operator, Tokyo Electric Power, or Tepco, have said that the magnitude 9.0 earthquake and 45-foot tsunami on March 11 that knocked out cooling systems at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant were far larger than anything that scientists had predicted. That conclusion has allowed the company to argue that it is not responsible for the triple meltdown, which forced the evacuation of about 90,000 people.
(要約)東京電力は、震度7を超える巨大地震や13メートルを超える巨大津波は東北大震災は科学者達が予測したどれよりも規模が大きかったので、約9万人の人々の避難を余儀なくさせた3度に渡るメルトダウンは同社の責任ではないと主張している。
But some insiders from Japan’s tightly knit nuclear industry have stepped forward to say that Tepco and regulators had for years ignored warnings of the possibility of a larger-than-expected tsunami in northeastern Japan, and thus failed to take adequate countermeasures, such as raising wave walls or placing backup generators on higher ground.
(要約)ところが、東電や(原子力保安院等の)規制当局が、東北地方で予想外の巨大津波が発生する可能性を示唆する幾つもの警告を長年に渡って無視し続けていたからこそ、より高い防波堤の設置や高地に発電機を置くなどの適切な対策が取れなかったという非難の声が、堅固に癒着した原子力産業の中からも漏れはじめた。
震災等による全電源喪失は「想定外」ではない
地震や津波の「規模」は想定外であっても、地震そのものは想定外ではない。その「規模」が問題なのではなく、地震立国であるなかであらゆる地震に対する対策を講じなかったことが問題なのである。とくに、全交流電源喪失といういわゆるシビアアクシデント(過酷事故)は、20年前の1980年代には「基本中の基本」の概念だったのだ。スイス原子力会議の現役の副議長が、9日の番組でそう述べている。
NHKの取材に答えるペロー副議長
1989年 アメリカ
この認識の下、アメリカでは原子力規制委員会(NRC)が提言を発し、地震の殆ど無い東部に展開している福島第一原発と同型機のマークⅠを配置する米原発にベントの導入を勧告した。導入は義務化されず、自主的な導入を促すに留まった。これに呼応して
1992年 日本
日本の規制当局は、地震立国である前提がありながら、独自の適切なリスク評価を行わずに立地環境のまるで違うアメリカの方針を模倣したのである。そればかりか、過酷事故が起きる可能性について完全に否定し、備えを怠ることの予防線を張っていたことを示す記録すらある。
同時期 スイス
一方で、同型機マークⅠが配置されているミューレンベルク原発を抱え、昨年末に脱原発を表明したスイスは手動式ベント、多重構造の自立式緊急冷却システムと2系統の緊急電源システムを装備。全交流電源喪失に備えマニュアルのない抜き打ち訓練も行って安全対策を何重にも多重化してきた実績を持つ。さらに、ミューレンベルグ原発では放射性物質の放出量を抑えるために薬品フィルターを実装し、放出される放射能を1000分の1にまで減らす努力をしている。
9-11後にシフトするアメリカの安全対策
2000年9月
同時多発テロを受け、アメリカは原発の安全策の変更を余儀なくされる。アラバマ州のブラウンズフェリー原発では、テロ等の不可測事態による全交流電源喪失に備え、非常用電源カートが常備されるようになる。この非常用電源により、最高8時間の電力供給が可能となる。同原発の作業員曰く、外部電源が全て失われた場合の「予備の予備の予備」の備えである。
福島原発事故後の各国の対応
2011年3月11日、一年前の今日起こった福島原発事故を受けて、世界各国は現状の改善を対応を検討した。
2011年7月 アメリカ
この報告を提出した約2週間後、NRCは特別な説明会を開催して作業チームに提言の説明を求めた。
そこでは、次のようなやりとりが行われたが、NRCの委員らには最終的な理解は得られなかった。
委員側:提言は新たな法律を作って規制を強化するという意味なのか。
チーム:法律の整備や規制の基準作りこそNRCの重要な役割だと考える。
委員側:それ以外の方法はないのか。たとえば通達とか。
チーム:そうして自主的に任せるやり方ではなく法律による規制が必要だと考える。
同委員会のヤッコ委員長は、「提言はNRCの主体的な行動が重要であり、業界の自主努力には限界があると強調している。特別チームは、福島後の世界で原発の安全対策に何が必要かを明確に示している」と述べ、唯一理解を示したのだが、多勢に無勢で力及ばず提言はNRCの方針として採用されなかった。
2011年9月 アメリカ
原発推進を決定したアメリカは34年ぶりに原発の増設を検討する。ジョージア州のヴォーグル原発だ。NRCは、東芝の完全子会社のウェスティングハウスが2基建造予定の次世代型軽水炉AP-1000の建造を許可するかどうかについて、検討会議を開いた。即日投票が行われ4対1(NRC委員会は5人制)で建造は許可された。この時、唯一反対票を投じたヤッコ委員長はその反対理由を次のように述べた。
「福島の教訓から学ぼうと様々な安全対策の強化が提言されている。やるべきことがたくさんあるのである。まるで福島がなかったかのように建設を許可することは私にはできない」(改訳)
前出のミューレベルク原発では、福島原発事故で必要な物資や設備の輸送に時間がかかったことから、軍の大型倉庫を借用して非常用備蓄倉庫として使用。いざというときにヘリで緊急輸送できるよう非常用電源ケーブル、移動式発電機、防護服、ホース、移動式ポンプなどを常備するようになった。それでも今年3月、スイスの連邦行政裁判所は「耐震性などに問題がある」として同原発に運転停止を命令。福島第一と同型の原発4基を抱えるスイスでの反原発運動は福島事故を受けてますます高まった。
2011年5月 スイス
スイスIAEA代表のヴァルター・シュタインマン連邦エネルギー局長は閣僚級会合で2034年までに国内全ての原発を廃止することを宣言。それが、安全対策を何重にしてもリスクが残る中で、そのリスクを許容できるのかを検討したスイスの出した答えだった。狭い国土で万が一福島と同じような事故が起これば、国家の存亡に関るとして、脱原発を世界に先駆けて公言した。
その時の言葉は、日本人がいま政府から一番聴きたい言葉だろう。
※以上の詳細はTogetterにもまとめてある。
結論:この国に原発を管理する資格はない
仮に能のない政策模倣を行うにしても、地震の少ないアメリカ式ではなく、あらゆる事態を想定して多重化したスイス式を選ぶべきだった。その程度の想像力と管理意識、危機意識(危機管理意識とは別)しかないこの国の管理当局にもはや原発管理は任せられない。
何にも増して歯痒いのは、福島原発事故を教訓に安全対策の見直しが実施されスイスでは確かな安全対策の見直しが行われ実践されているというのに、当の日本が未だに民間事故調故調報告止まりで何ら具体的策を実施せずに言った言わないの責任転嫁合戦を繰り広げていることだ。管理当事者であるにもかかわらず!
そんな日本の原発規制当局に次の言葉を今日、この日にかみ締めてもらいたい。
前出のスイス原子力会議のペロー副議長のものだ。
常に立ち止まらず改善する努力を続けていても、「完璧」とは言えない。原発の安全性を高めるには常に、「本当に安全であるか」を考え続けれなければならない。原発を運営するということは、それだけ重い責任が伴うということなのである。(改訳)
まさに至言である。
脱原発社会の実現を祈念して
2012年3月11日