GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

seeking for my another sky─それは、この世界そのものだと気付いた

ID:静かなる誇り

「国家の誇り」を闇雲に強調するのは、
誇りに自信が持てない証拠にしなからない。

作家・高橋秀実

リクルート・フリーマガジン『R25
2006年9月28日号(No.111)の巻末コラム
『結論はまた来週』より


「自分探し」と同じで、「誇り」にこだわる人間は、
それが自分の中にないことを自覚しているだけで、
その発見を誰かと共有したいと思っている。
共有しないと、不安になるんだろう。自信がないから。

だが、「自負」「自尊」などというものは、
自分の中で静かに育てればよいものであって、
それを声高に他にも求めるのは、独り善がりの押し付けに等しい。

かつて俺は、電車の中吊りで国家の品格のキャッチを読んで
共感して「言霊」にそれを載せた。だが本の内容に共感しているわけではない。

あの本はなんであるか。なぜいまの日本で爆発的に売れたか。答えは簡単だ。それは、

国家の品格』がハウツー本だからだ。


自らの何を誇れるか、そんなことまで他人に指南されないと見つけられないのなら、
たしかに今の日本人に誇れるものなど何もないのかもしれない。だからこそ、
過去の価値観にしがみつき、過去自分以外の人間が出来たことに思いを馳せ、
自分が生きたこともない過去の時代を懐かしむんだろう。情けない限りだ。

亡国を憂う前に、没個を嘆け!


(了)