GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

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撤回:日本は極東軍事裁判の“判決”を受諾した

以下は、トラバ先のWorldforumさんに宛てるものです。

Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts both within and outside Japan, and will carry out the sentences imposed thereby upon Japanese nationals imprisoned in Japan.

日本国は、極東国際軍事法廷、並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘置されている日本国民に、これらの法廷が課した刑を執行するものとする。

これが当時の外務省の公式訳です。が、これは誤訳です。
もう一度、英語原文をよくご覧になってください。

Japan accepts the judgments of the International Military Tribunal for the Far East and of other Allied War Crimes Courts

キーワードは“of the”です。
これが、純粋に英文法的に誤訳を生み出した要因だと思われます。

極東国際軍事法廷と連合国戦争犯罪法廷の役割は、裁判を行うことにあります。したがって、日本がこれらの国によって行われた裁判を受託するのであれば、これらの法廷が共通して行った“judgment”(単数形)を受け入れることになるはずです。しかし原文では、これらの法廷によって行われた○○を受託するとあります。“accepts the judgments of”です。これはすなわち、これら法廷がもつ1つの役割ではなく、これらの法廷がそれぞれ個別に行った行為を意味します。すなわち、passing judgmentsという行為。判決を言い渡す行為です。ここでは複数になっているので、正しい訳は「諸判決」となります。まさにWorldさんがご指摘したように、前後関係によって、ここでは「判決」の訳が適切になるのです。

文章のこの部分で「諸判決が受託」されている場合、別の言葉“sentence”を使った“carry out the sentences imposed thereby"は、判決をすでに受託しているという前提で、“sentence”が持つもう1つの意味「刑」を執行することを意味します。つまり、×「裁判を受諾し、判決を執行する」のではなく○「諸判決を受諾し、刑を執行する」というのが、英文の正しい解釈となります。よって最終的に正しい訳はこうなります。

日本国は、極東国際軍事法廷、並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の諸判決を受諾し、且つ、日本国で拘置されている日本国民に、これらの法廷が課した刑を執行するものとする。

この結論をサポートする言語的な理由は、実は他にもあります。

ご存知のように、この条約の公式言語は英語のほか、フランス語とスペイン語もあります。つまり、この条約の正文は3通り存在するということです。しかも、日本文は厳密に正文ではありません。その何れも、英文の「judgments」に対し「言い渡された判決」という意味の訳語が当てられているのです。

英文:judgments
仏文:les jugements prononces
西文:las sentencias

この中で仏文の“prononces”はまさに「言い渡された」を意味する言葉で、「何が」に当てはまる主語が“jugements”(判決)となるわけです。西文も同様で、わざわざ「言い渡された」という主旨の言葉を使わずストレートに“sentencia”(判決)と表現しています。

つまり英語的にも、また他言語的にも、問題の文は「判決」を言い表しているとしかいいようがないのです。

但し、コメントでも述べたように俺の以下の見解は変わっていません。言語的にいかに当初の見解を撤回しようとも、です。それが、歴史を受け入れるということですから。

どんなに不当と思われる内容の条約や判決であっても、当時の日本の指導者による、未来の日本の存続・繁栄のための苦渋の決断によって日本は独立を保証され、現代に至るまでの繁栄を謳歌してきた。過去に行われたこの英断により、今があり、衣食住に困らない生活と自由を約束されている。この単純な事実を忘れてはならない。過去より前に向かなければならないのに後ろばかり向いて、過去を過去として受け止めて前進できない一部の人たちには、同じ日本人として潔さのなさを感じる。単純に言えば「往生際が悪い」の一言。過去締結された条約のコアとなる部分を今更否定するような恥知らずな行為は慎むべき。

日本が日本だけの歴史観や証拠となる文献を元に「日本だけの歴史認識」を持つのではなく、中韓からさらに発展させて裁判に列席した旧連合国すべてと共通した認識を持てるよう“歴史の掘り起こし”共同プロジェクトを提唱してはどうか。勿論これは、どこの国もそんな“掘り起こし”作業には協力しないだろうということ前提にした皮肉を込めたブラックジョークだ。日本国民が自己満足で自虐史観から立ち直るために、現在の価値観や現在の法治概念で過去の力の支配の時代の国際裁判を掘り起こしてみてもまったく意味はない。

以上です。