GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

seeking for my another sky─それは、この世界そのものだと気付いた

改憲:改憲派にとっての「引用」という作業の杜撰さ

TB先の記事で、憲法九条改正に関するNHKの終戦の日特別記念番組『日本のこれから~考えてみませんか憲法九条』の中で、パネラー陣の一人である小林よしのり氏の発言を、正確に引用せずに勝手に要約している(これが論文だったら剽窃という行為、すなわちねつ造に当たる)箇所が見られた。良識的護憲派として正確を期すため、以下、ビデオ録画から直接音声起こしを行ったものを転記する。

TB先で引用扱いにされている、小林よりのり氏が語ったとされる発言。
明らかに剽窃であると思われる部分を【】で示す。

小林よしのり氏の発言

TB先のブログでの記述
「9条を護り、【さらに軍隊、自衛隊なんぞいらない】という人はガンジーの無抵抗主義と同じである。【徹底して抵抗せず、】人の鎖となって銃弾を受け続けて、【死んでも全国民が抵抗せずにその国を護るという方法であり】、もし【日本がその完全な『無抵抗主義』に賛同するのであれば】、私も【9条護憲の立場に回る】。」

以下、上記【】の該当部分と思われる箇所を同じく【】で示す。

TB先の記事がいかに誇張・脚色されているかがよくわかるだろう。
これでは改憲派とは客観的で正しい議論など望めなくて当然である。

引用は、要点を抑えていればよいというわけではない。部分的に引用する場合は「中略」や「...」などを挿入して、間にも発言があることに気を配る必要すらある。繊細かつ緻密なプロセスなのである。それもそのはず。他人の発言を扱うのだから、その発言に敬意を表するのであれば、引用内容に気を配るのは良識あるものとして当然の配慮なのである。一般的に引用時に割愛してよいのは「あの」「ええ」「その」など、文頭の息継ぎにいれられるような表現のみに限られる。

実際の発言の起こしテキスト
第一部
「...もし、本当に言われるとおりにですね。憲法九条をまったく理念どおりに護る、【そして自衛隊を廃止する、日米安保をやめる。で、まったく無防備の状態で日本が生き抜いていこうというのはですね、相当な覚悟が要りますよ。】だから、もし、それほどの覚悟を日本人が出来るというのならば、わしも考え直してもいいよ。これはとてつもない覚悟ですから、これは!」

第二部
「...ガンジー主義っていうのはね、日本の平和主義者の方たちが思っておられるような平和主義ではありません。ガンジーの「非暴力による抵抗主義」というのは、もし―当時はイギリスの植民地だったわけですけれどもね―他国の軍隊が攻めてきたら、【非暴力によって徹底的に抵抗せよ】。それで、自分の国の独立を守る、という精神です。だから、本当、【横一列に並んで、銃弾・火器を浴びて、バタバタバタバタ倒れていっても、それでも非暴力でいくという、恐ろしいこれはイデオロギーなんです!】わしはこの、これに賛成です。【やってもいいです、わしは。】ただ、おそろしく勇気が要るんです。【これを、日本国民がやれますか。平和主義者の方がやれますかということを、わしは問います】」

市民論者からの反論

TB先のブログでの記述
「小林さんの戦争論の中で『命より大切なものがある。』と書かれてますけどね、【それはウソですよ!命より大切なもんなんてないですよ!】」

実際の発言の起こしテキスト
「...私は、やっぱりそういう意味ではですね。あの、小林よしのりさんの本にもあったんですが、『戦争論3』。その最後の章は、『生命より尊い価値』になっていますよ。【私はそれはおかしいと思います。『生命より尊い価値』なんて、何でしょう?】それが占めるところは、天皇の歌があり、そして特攻隊の歌があり。それしまってますよ(?)...」

小林よしのり氏からの反論

TB先のブログでの記述
「先ほど述べたガンジーは命を失ってまで無抵抗を貫いたのであります。
それは即ち、命を捨ててまでも護ろうとした、【命よりも大切なものがあるということなのです。】」

実際の発言の起こしテキスト
「命より大切なものがあるか、と。ね?それだったら、ガンジー主義はやれませんよ?ガンジー主義はやれませんよ?命が一番大切ならば、逃げるしかありません。つまり、要するに植民地の民になるしかありません。ガンジーを否定しているわけですよ。インドは、イギリスの植民地だったわけです。ね?植民地の民でいることが嫌だから、ガンジーは【命を投げ出してでも無抵抗を貫いたんですよ?命が大事だったら、ガンジー主義はできないんです。】」

全然違いますね。百歩譲って要約しても、こういう恣意的な要約にはならないはずです。まったく杜撰なものです。自分が発言者だったら、こんな風に引用されたら冗談じゃありませんよね。噴飯ものです。

改憲派の良識を疑う記述だったので敢えて晒しました。
これが、俺の戦闘的平和主義のスタイルです。

(了)

Last Updated: 08.16.2007 22:00