GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

seeking for my another sky─それは、この世界そのものだと気付いた

外交:(前編)常軌を逸した敵性国家に対する有効な備えとは─総括メモ

平壌宣言破棄の意図は何か

ミサイル発射に絡む北の一連の行動はおよそ常軌を逸している。聞けば、中国は事前に発射中止の申し入れを行って制止していたという。だがそれでも北は制止を無視して発射した。

平壌モラトリアムで北が発射凍結を求められたのは長距離ミサイルのみで、中距離は凍結対象ではない。そこで平壌は中距離のスカッドとノドンを長距離のテポドン2とないまぜにして、どさくさに紛れてモラトリアムに違反する行為を行った。北の言い分は、「日朝間の対話が凍結された状態だから、モラトリアムそのものが無効になっており、ミサイル発射は違反行為に当たらない」とのことだった(参考:朝鮮外務省スポークスマンの公式回答)。

平壌宣言(全文)は、両国間の善意により成り立っており、宣言を破棄あるいは無効化するにあたり、通常の政府間協定のように事前にその旨を通達する義務は両当事者にない。したがって、平壌宣言を守る義務はないと一方が主張すれば、共同宣言に至るまでの一部の合意が無効になったと考えるのは妥当である。ここまで、北の主張は教科書通りになぞれば間違ってはいない

しかし、仮に宣言の一部が無効だとしても、その宣言を採択するまでの精神まで否定してしまうと、両当事者間の関係は、その宣言を採択する以前の形に戻ることを意味する。通常、こうした現状回帰の行為は、国家が開戦前のジェスチャーとして行うことである。北にはその自覚があるのだろうか。またその影響を十分に加味した上での高度な政治的判断なのだろうか。

これまでの対朝外交

現状に至るまで、日朝は様々な外交チャンネルを通じて多角的な交渉を行ってきており、日朝間の対話の進展は両国間のみの問題ではない。北が自国の安全保障の鍵を握ると考えている最重要国のアメリカは、北との直接交渉を断固拒否しており、周辺海域における軍備拡張にも怠りがない。北が切実に求める現政権維持の確約について、アメリカは軍事・外交的に牽制しつつ明解な回答をしていない。また経済制裁を弛める気配もなく、北を締め上げる決意に変わりはない。そのアメリカは、日本と同盟関係にあり、北に対する姿勢は、それぞれの国の事情により多少異なれど、日米ともに一貫して厳しい姿勢で臨んできた。

日本は北に対し、外交ルートを通じて公式にミサイル発射の自制を求め、発射された場合には経済制裁と国連安保理への事態の付託も含む制裁措置を発動すると事前に警告していた。

アメリも日本のこうした姿勢に合わせ、安保理付託は日米合意への上の共同措置だということを明確にした。一方で、軍事的な報復の可能性については触れず、あくまで外交を通じて圧力を与え続ける意志を暗に示し続けてきた。そのせいか、軍事的な威圧を行ってこないアメリカに安心した北は、挑発行為をエスカレートさせるという失策を講じてきた。

続く

(本稿は携帯にて執筆のため、職場に到着したので一時休載。)