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外交:「道徳的破綻」を非難される靖国参拝問題(09.25更新)

「戦犯に敬意を表する行為は道徳的に破綻している」

``Paying one's respect to war criminals is morally bankrupt and unworthy of a great nation such as Japan,'' Tom Lantos, the ranking Democrat on the committee, said according to a transcript. ``This practice must end.''

「戦犯に敬意を表するという行為は、道徳的に破綻しており、日本のような偉大な国にふさわしくない行為である。このようなしきたりは止めるべきである」

米下院外交委員会筆頭委員 トム・ラントス民主党議員
(GivingTree訳)
15日付け米ブルームバーグ紙オンラインより


 長きに渡って日本の国内問題(内政問題ではない)だとして距離を置いていた米議会の有力議員が、ついに沈黙を破って靖国参拝問題に対する見解を明らかにした。このニュースは全世界をかけめぐり、米有力経済紙のブルームバーグがこれを取り上げていることからも、米国において靖国問題が単なる日本の内政問題ではなく、アジア地域の経済ひいては安全保障にも大きく影響する問題であるという認識のあらわれであると言えるだろう。
 共同(英語版)によると、トム・ラントス議員(Wikipediaプロフィール(英文))はナチスホロコーストの生き残りで、ハンガリー系移民である、戦争犯罪を最も憎んでいるユダヤ系米議員の1人。米下院で開かれた公聴会の議事録によれば、同議員は歴代首相による靖国参拝を「日本の歴史に関する健忘症の最もひどい例だthe most egregious example of Japans historical amnesia)」と批判した。ラントス議員は大戦中の母国ハンガリー占領に対しレジスタンス運動に参加した経験があるという米議会では唯一のホロコースト生存者である。
 同議員が生来持つ戦争犯罪に対する人一倍の嫌悪感を考えれば、公聴会での発言はある程度は割り引いて考える必要があるかもしれない。だがそれでも、神道の教義上、一度祀られた魂を分祀することはできないという考えがあるとしても、同氏の次の発言には感情論を超えたロジックがあると思う。
 「A級戦犯」という言葉は、法的に正当な等級付けとはいえない。だが、勝ち得ない戦争を指揮し最後まで早期講和を目指さなかった国家の指導者を、日本国民は裁く術を持っていなかった。それを当時の力関係により、連合国によるいわば代理裁判が可能となり、戦争の全責任を持つとして「A級戦犯」という犯罪等級が造られたのである。
 日本は、サンフランシスコ講和条約極東軍事裁判の判決を含むその意義をすべて国家として受託することを確約することで、国際社会への復帰を許された。すなわち、そこで戦争犯罪人として裁かれた人物については、日本社会の認識の上でも戦争犯罪人であるということを、世界に確約したも同然なのである。その戦争犯罪人を、その他の戦没者と一緒くたにして祀り、参拝するという行為は、サンフランシスコ講和条約で世界に対して公約した東京裁判の受託を無意味化する行為なのではないか。つまり、難航する会議の中で日本の社会復帰を認めた国際社会に対する背任行為ではないのか。このような歴史的背景を考慮すれば、ドイツ第三帝国によるホロコーストをかろうじて免れた米議員唯一の生き残りであるラントス議員が、次のような発言をするのは道理に適っており、十分に理解できる見解ではないだろうか。

曰く、A級戦犯が祭られている靖国神社への参拝は:

"...they are like laying a wreath at the graves of former Germany Nazi leaders such as Heinrich Himmler, Rudolf Hess and Hermann Goering. "
"Japan's failure to deal honestly with its past does great disservice to the nation of Japan, offends the other key players in Northeast Asia, and undermines America's own national security interests by exacerbating regional tensions,"

「…ドイツでナチス幹部のヒムラー、ヘスやゲーリングらの墓に献花するのと同じである」
「…日本が過去に対する誠意ある清算を怠ることは、日本国民にとっても大いに不利益であり、韓国や中国の怒りを買うことで地域の緊張を高め、合衆国自身の国家安全保障上の問題となる」

(GivingTree訳)
共同(英語版)

(了)

参考:靖国問題に関する各国での最新の報道(全12本)
インド:『Why Yasukuni Hurts
靖国参拝がなぜ問題になるのか)
『FRONTLINE』誌(2006年9月22日号)

?b>カタール:『Japan's next leader is unapologetic over war』
(戦争を省みない日本の次期指導者)
AFP経由『Gulf Times』紙(2006年9月18日)

?b>タイ:『Japan's new leader must take a fresh look at the region』
(日本の次期指導者はアジアに対する接し方を改めるべき)
『The Nation』紙(2006年9月18日)

以降、09.19更新
?b>英国:『 Koizumi's unique legacy of change』
(常に「変化」を呼んだ小泉政権が遺したもの)
BBC News(2006年9月18日)

米国:『Japan‘s premier race lacks competition』
(競争無き日本の総裁選挙)
『The Benton Crier』紙(2006年9月17日)

以降、09.20更新
香港:『Open debate under threat in Japan』
(迫り来る公開討論の自由の危機)
『Asia Times Online』紙(2006年8月26日)

?b>ロイター:『ANALYSIS - Japan's Abe may temper ideology with pragmatism
(分析:現実主義的な政策で思想を抑制する可能性を持つ安倍政権)
Yahoo Asia News経由『ロイター』(2006年9月17日)

南アフリカ:『Reformist ready to call it a day』
(改革の終焉)
『The Star』紙(2006年9月19日)

?b>マレーシア:『Japan's Abe pledges bold diplomacy, growth, reform』
(大胆な外交、成長と改革を約束する安倍氏
『the star online』紙(2006年9月8日)

以降、09.22更新
?b>クリスチャン・サイエンス教会:『Japan's rising son』
『陽の昇る国の子、現る』
米クリスチャン・サイエンス・モニター紙(2006年9月22日)

以降、09.25更新
国際経済紙フィナンシャルタイムズ:『Talks point to possible thaw in Japan-China ties』
日中間の緊張緩和をもたらす可能性のある協議のポイント
英フィナンシャル・タイムズ(2006年9月24日)

国内国際紙ジャパン・トゥデイ:『Abe and the Yasukuni question』
安倍氏靖国問題
ジャパン・トゥデイ紙(2006年9月25日)

参考:掲示
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