GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

seeking for my another sky─それは、この世界そのものだと気付いた

詩:(和訳)砂の海に囚われて

昨日の翻訳はあまりにもリテラルな邦訳だったので、
今度は日本語でも自然に読めるよう工夫してみた。

(実は英語も韻を踏む工夫のしすぎて、
文がややぎこちなくなってしまったのだが…)

遠くそびえる陽の当たる砂丘に、
「知恵」を携えた男が立っていた。

彼は私に向かって何かを叫んでいたが、
その声は熱気にかき消されてしまった。
すると突然、彼は私に手を振った。
そしてその拍子に、「知恵」が
足を伝ってこぼれ落ちてしまった。

彼は即座にそれを掴まえようと、
慌てて丘を転げ降りたが、
「知恵」はスピードを増し、
悲壮なまでに必死な彼を、
無情にも置き去りにしていった。


彼は砂の海に囚われてしまった。


彼の世界を取り度すために
私は彼の「知恵」を掴まえることにした。
だが「知恵」はまるで獲物を追う蛇の如く
ますます加速を強めていく。

一緒に丘を転げ降り掴まえようとしたが、
すべて不毛な試みに終わった。
加速した「知恵」には、
誰も追いつくことなどできはしない。

そこで私は砂を掴んで、
腹の中に押し込んで身体を丸くした。
すると熱した岩のように滑らかに、
まるで鼠のように素早しこく
滑らかに転がるようになった。


私は砂の海に囚われてしまった。


「知恵」に追いつくほど順調に加速した私は、
手を伸ばして「知恵」の先頭部分を掴んだ。
しっかり掴んだと思ったら、
ふいに引き上げられる感じがした。

次の瞬間、

慣性の法則(オキテ)に則り
私は宙に激しく舞い上げられ
まるでみじめな浮浪者のように、
フラフラと宙をさ迷った。

気がつくと「知恵」は自分の手にはなく、
私は地面に体を叩きつけられ、一回転した。


「知恵」はさらに加速を強め、
「知恵」との交流を求め続ける、
男たちの願いを顧みることなく、
忘却の彼方へと走り去って行った。


私はまだ、砂の海に囚われていた。


私は永遠に、砂の海に囚われ続けるのだろう。
いつの日か、誰かに救い出されることを夢見ながら。