GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

seeking for my another sky─それは、この世界そのものだと気付いた

国連拷問禁止委に実権実績を非難される英国 明日は我が身となるか(OBN)


国連拷問禁止委に人権実績を非難される英国
明日は我が身となるか 

2013.06.22

AFP Photo / Essam Al-Sudani

国連の拷問禁止委員会
は、英国政府による人権侵害を非難し、国際基準に見合うよう直ちに是正措置をとることを求めるという、これまでにない強い要求を行っていたことが、今月2日、ロシアトゥデイ紙の報道により判明した。


人権状況の改善を厳しく求められた英国
委員会は、英国政府による、いわゆる「テロとの戦い」における人権侵害行為やイラク戦争におけるイラク人捕虜に対する不法な取扱いを主な対象として審査を行い、これらとは別にさらに40項目の是正を求める勧告を行った。 

委員会が発表した勧告書(総括所見)では、9.11同時多発テロ事件以降、アフガニスタンおよびイラクに対して行われた武力介入において、深刻な拷問や不法な取扱があったとの指摘があることに、「重大な懸念がある」として、以下の是正を求めた。
  • 国外で拘束されている拘留者について、不法な取扱や拷問が行われたかどうかを調査する査問委員会を設置すること。(第15項)
  • “合法的な権限、正当性及び根拠”があれば、重い苦痛や苦難を強いることがあっても訴追を免れることを規定する、1988年の刑事裁判法における、いわゆる“回避条項”を廃止すること。(第11項)
当該勧告事項
(第11項)The State party should repeal Section 134(4) and 134(5) of the Criminal Justice Act 1988 and ensure that its legislation reflects the absolute prohibition of torture, in accordance with article 2, paragraph 2, of the Convention, which states that no exceptional circumstances whatsoever may be invoked as a justification of torture.
(第15項)The Committee recommends that the State party establish without further delay an inquiry on alleged acts of torture and other ill-treatment of detainees held overseas committed by or at the instigation of or with the consent or acquiescence of British official
これらに勧告事項に関連し、委員会は1994年の情報機関法(Information Services Act)の規定(政府閣僚により署名された合法的権限を認める委任状がある場合は情報機関関係者の訴追を免除する)についても懸念を表明した。これに関連し、イラク戦争捕虜に対する拷問について未だに誰も訴追に至っていないこと、とりわけ2003年の英軍拘留中に殺害され死亡したハバ・ムーサ(Baha Mousa)氏について、たった一人の兵士の責任で済まされたことについて委員会は遺憾の意を示した。

同様の指摘は国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチも行っていた。
また委員会は、国家安全保障に係わる案件について、司法及び安全保障法(Justice and Security Act)に基づき英国政府が7月に導入を検討しているCMP(Closed Material Procedures:非公開証拠手続き)と呼ばれる秘密法廷手続についても懸念を表明した。この手法により、伝聞に基づく証拠や拷問に基づく証拠の利用が有効となるほか、"Special Advocates"といわれる国によって選ばれた"特選弁護人"を利用することで「公正な裁判を行うことが難しくなる」と勧告書は指摘する。
これら一連の指摘に対する英国政府の立場は明らかにされていない。

委員会の勧告を無視した日本
英国への勧告に先立つ5月31日、拷問禁止委は日本に対しても勧告を発していた。勧告書で委員会は代用監獄制度の問題、取調べと自白の問題等計7つの点を指摘。このうち、戦時性奴隷制(いわゆる「従軍慰安婦」)の問題については「閣僚を含む政府高官や地方役人について政府に反駁を求めるもの」であったが、日本政府は18日、「法的拘束力を伴うものではないため従う義務はない」として閣議決定を行い、実質的に委員会の勧告を無視する対応をとった。
また政府与党の自民党が検討している日本国憲法改正草案(2012年4月27日策定)では、拷問の禁止を定める第36条において、これまで『絶対に禁ずる』とされていたが文言から、『絶対に』が削除されることが提案されていることから、法曹界から懸念の声が上がっている。
英国では、国家安全保障の名において、国内法に基づき情報機関関係者等が訴追を免れたり、特定条件下では拷問が合法とすらされており、これが国連拷問禁止委員会により問題視された。
憲法改正により国内法が制定され、これまで「絶対に禁じられていた」拷問が特定条件下では可能になるのであれば、日本も今後は、英国と肩を並べる「人権後進国」へと成り下がる可能性がある。
日本は英国のように戦力としての軍隊を持たず、またこれまで、「テロとの戦い」についても憲法上の制約により直接的な武力行使への参加は避けてきため、英国が抱えるような捕虜の取扱いから生じる人権問題等には、これまで関与したことがない。
2004年8月、日本政府は捕虜の取扱いを定めるジュネーブ諸条約の追加議定書に加入し、2007年の7月には捕虜の取扱いに関する重大な不法行為を裁くことのできる国際刑事裁判所ローマ規程に加入した。国際的な刑事責任を果たす体制を整えた一方で、憲法上で拷問を「絶対の禁止事項」から外すことで、将来的に、国防軍等の設置の暁には、英国同様に国内法に「回避条項」を定める可能性が懸念される。

アフガニスタンイラク戦争の総決算として、国連の条約機関にこれまでにない強さで非難された英国。憲法改正の暁には、明日は我が身となるやもしれない。

 (C) 2013 All rights reserved. OBN

"What we created, we could not handle"(我々が作り出したのは、我々の手に負えないものだった)

イメージ 1
2012年度国際NGOが選ぶ「無責任な企業」世界第2位に輝いた東京電力を表すゴジラ

スイス東部に政財界のリーダーが集う世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に合わせ、国際NGOが27日発表した「無責任な企業」のランキングで、東京電力が第2位になった。福島第一原発事故をめぐり「情報の公表が遅く、うそもあった。隠蔽(いんぺい)、改ざんの体質がある」とされた。- 朝日新聞デジタル(2012年1月28日)⇒詳細

本編Ⅱ:歴史認識問題に関する橋下市長の発言や声明をめぐる論考・報道・情報総合ポータル(※転載歓迎)

橋下徹大阪市長の発言・声明について ⇒ 概要

Ⅰ. まとめ/ブログ・アンケート等

1.まとめ/ブログ
2.アンケート

Ⅱ. 国内外の報道・諸団体の対応

(※国内紙は毎日・朝日・共同・産経以外は殆どがデットリンクのため掲載不可)
(関連報道)

Ⅲ. 各種基本情報

1.2013-05-13定例ぶらさがり会見情報
2.2013-05-13定例ぶらさがり会見動画



2. 各国政府対応
3. 2013-05-27日本外国特派員協会記者会見

4. 国際・国内刑事司法上のキーワード

以上



※本総合ポータル(本編)に追加すべき情報があればコメント、FacebookあるいはTwitterにてご連絡ください。

本編Ⅰ:歴史認識問題に関する安倍総理の答弁や発言をめぐる論考・報道・情報総合ポータル(※転載歓迎)

Ⅰ. 論考ブログ/まとめ・アンケート等

1.ブログ/まとめ

Ⅱ. 国内外の報道

(※国内紙は産経・共同・朝日以外は殆どがデットリンクのため掲載不可)

Ⅲ. 各種基本情報

1.国会答弁
  • 発言起こし (日・英)
  • 発言内容(※赤字が問題となった部分)
「‥とくに侵略という定義については、これはまあ、学界的にも国際的にも定まっていない、と言ってもいいんだろうと思うわけでございますし、それは国と国との関係のおいてですね、どちらの側から見るかということにおいて、違うわけでございます。そういう観点からもそういう談話においてはそういう指摘がされているのは事実ではないかと、このように思います。」

2.動画

3.政府資料
4.侵略の定義
侵略犯罪
一、この規程の適用上、「侵略犯罪」とは、国の政治的または軍事的行動を、実質的に管理を行うかまたは指示する地位にある者による、その性質、重大性および規模により、国際連合憲章の明白な違反を構成する侵略の行為の計画、準備、着手または実行をいう。
二、第1項の適用上、「侵略の行為」とは、他国の主権、領土保全または政治的独立に対する一国による武力の行使、または国際連合憲章と両立しない他のいかなる方法によるものをいう。以下のいかなる行為も、宣戦布告に関わりなく、1974年12月14日の国際連合総会決議3314(XXIX)に一致して、侵略の行為とみなすものとする。
a. 一国の軍隊による他国領域への侵入または攻撃、若しくは一時的なものであってもかかる侵入または攻撃の結果として生じる軍事占領、または武力の行使による他国領域の全部若しくは一部の併合
b. 一国の軍隊による他国領域への砲爆撃または国による他国領域への武器の使用
c. 一国の軍隊による他国の港または沿岸の封鎖
d. 一国の軍隊による他国の陸軍、海軍または空軍若しくは海兵隊または航空隊への攻撃
e. 受け入れ国との合意で他国の領域内にある一国の軍隊の、当該合意に規定されている条件に反した使用、または当該合意の終了後のかかる領域における当該軍隊の駐留の延長
f. 他国の裁量の下におかれた領域を、その他国が第三国への侵略行為の準備のために使用することを許す国の行為
g. 他国に対する上記載行為に相当する重大な武力行為を実行する武装した集団、団体、不正規兵または傭兵の国による若しくは国のための派遣、またはその点に関する国の実質的関与

5.2013.05.01米連邦議会調査局報告書
イメージ 1
  目 次
  要 旨 ※マスコミが一番問題視









以上



※本総合ポータルに追加すべき情報があればコメント、FacebookあるいはTwitterにてご連絡ください。

概要:歴史認識問題に関する安倍総理と橋下市長の答弁や発言をめぐる論考・報道・情報総合ポータル(※転載歓迎)

概要


【2013年4月23日】国会の衆議院予算委員会で行われた質疑において安倍晋三内閣総理大臣が、いわゆる1995年の「村山談話に関連して行った「侵略の定義」に関する答弁の内容が、国内外で物議を醸した。国内では左派政治家等を中心に問題提起され、国外ではとくに中国・韓国等の周辺国を含め同盟国の米国までもが様々な形で懸念を表明。とくに米国での報道や政府関係資料(議会報告書)・経済界からの表明などを通じて、安倍内閣に対し歴史修正主義姿勢の是正を求める国内外の圧力が高まった。

安倍内閣は、2006年の第一次安倍内閣発足時から、「村山談話」や、従軍慰安婦問題に関するいわゆる1993年の「河野談話について、これらの見直しを示唆しており、2013年の第二次安倍内閣発足時には、総理大臣の方針として戦後70年の節目を迎える2015年の終戦記念日にいわゆる「未来志向の総理大臣談話」を発表する意向を表明していたため、国内外で警戒感が強まっていた。

【5月15日】安倍総理参議院予算委員会で行われた質疑において、いわゆる村山談話」を継承することを表明。さらに【5月24日】には、内閣として、歴史認識問題に関する質問主意書に対する政府答弁書の形で、河野談話」の継承を閣議決定する。このように、ちょうど約1か月間に渡って国内外を騒がせた安倍内閣歴史修正主義姿勢は、村山談話」と「河野談話」の両談話を継承する形で一応の決着をみた。一方、安倍内閣【6月18日】慰安婦問題に関して国連拷問禁止委員会が発出した総括所見の勧告内容について、「法的拘束力を持つものではなく、締約国に従うことを義務づけているものではない」との答弁書閣議決定。勧告に準ずる措置をとらないことを政府の公式方針として表明した。



橋下徹大阪市長の発言・声明について ⇒ 本編Ⅱ(総合情報ポータル)へ

【2013年5月13日】日本維新の会共同代表である橋下徹大阪市長が、市長として定例のぶらさがり会見で行った歴史認識に関する発言、とりわけ1993年のいわゆる「河野談話にも関わる慰安婦問題に関する一連の発言内容が国内外で物議を醸した。従来の韓国等の周辺国からの反発に加え、発言の中で在日米軍の性犯罪問題について触れたこともあり、事態は米軍や米国政府(国防省及び国務省)までを巻き込む国際問題となった。6月に市長として米国各都市を回る訪米日程を控える橋下市長は、ツイッターでのコメントや幾度と無い会見などにより釈明を図るが、事態はついに好転せず、国際社会に向けて正式な表明を行うことになる。

【5月27日】橋下市長は日本外国特派員協会(FCCJ)での会見で声明を発表し、一連の発言について国内外の理解を求めるが、翌【5月28日】、6月の訪米日程については「日程調整が難航したため」という理由で中止したことを表明する。【5月30日】大阪市議会は、橋下市長の一連の責任を追及するため自民・民主・共産の野党3会派が提出した問責決議案の採択を検討するが、与党の維新及び公明の反対多数により否決される。

【6月11日】大阪市は報道を通じて、FCCJの公式表明に先立つ【5月22日】6月の訪問先予定の米カリフォルニア州サンフランシスコ市の交渉窓口の幹部から市長室を通さない非公式な形で、公式訪問や表敬は「受け入れない」とする、事実上のペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)通告を受けたことを公表。問題の書簡の全文が報道を通じて公開される。この件について、大阪市からの表明はなされていない。

■前段にある考え方

私は政権ウォッチャーとして、また中道左派を自認する実用主義者(プラグマチスト)として、2006年の第一次安倍内閣の時代から連綿と続く安倍内閣や周辺の新興政治勢力(この場合は、日本維新の会)の歴史修正主義志向を注視し続け、国外とくに米国での報道や政府・議会の反応等を中心に情報や論考をまとめてきた。戦後レジームの脱却を掲げる安倍内閣歴史修正主義志向の方針や政策、及びこれに連なる政治勢力の方針や政策は、最終的に米国を含む関係国及び国際社会との関係を損ね、国際社会との協調により信頼醸成を図るという広義の国益に資さない」、というのが私の持論である。本ポータルは、これを前段の考え方として、それぞれの発言者に関する国内外の報道を含む総合的な情報やアンケート、並びに個人的論考をそれぞれ本編Ⅰ・Ⅱとして個別に集約したものである。

以上



※本総合ポータル「概要編」に追加すべき情報があればコメント、FacebookあるいはTwitterにてご連絡ください。

脱原発:カリフォルニア州のサンオノフレ原発、原子炉2基の廃炉が確定(OBN)

カリフォルニアで原発廃炉が確定
カリフォルニア州のサンオノフレ原発が永久廃炉されることが決まった。放射能漏れにより昨年の初め頃から運転を停止しており、安全に再稼働が行えるかが懸念されていた中での決定だった。
原発を運営するサザン・カリフォルニア・エジソンSCE)は7日に発表した声明の中で、サンオノフレ原発(略称:SONGS)の2基の原子炉[訳注:ロイターによると1983年と1984年にそれぞれ稼働を開始]が「地域に40年ものあいだ電力を供給してきた」実績を称える一方で、16か月もの間、再稼働するのか、或いは出来るのかが不明な状態が続いたことは「我々の顧客にとっても、投資家にとっても、そして地域の長期的な電力需要計画を立てる上でも問題であると判断した」としている。
「将来を見据え、2基の原子炉を廃炉にすることは、カリフォルニアの将来のエネルギー需要について、その不安を払拭し、秩序ある供給計画を可能にするであろう」
SCEのロン・リッツィンガー会長は、同じ声明の中でこう述べた。
AP通信によると、SCEは原子炉の運転を停止して以来、5億ドル以上の費用をかけて修理や代替電源の整備を行ってきた。140万世帯の電力を供給するSONGSの周辺80キロ以内には、740万人のカリフォルニア市民が生活している。
過去、ロサンゼルス・タイムスは次のように報じていた。
「サンオノフレ原発は、代替蒸気発生器[訳注:共同によると三菱重工業製で2009年以降に設置されたばかりのもの]の配管の1つから微量の放射性の蒸気が漏れ出したことがわかり、2012年1月31日にその運転を停止した。その後、業界では前例のない他の8つの配管も圧力検査で不合格となったことが発覚。さらに原発内の2基の原子炉の両方の配管において数千箇所の摩耗[訳注:共同によると1万5千箇所]の兆候があることが確認された。
SCEは、とくに2基ある原子炉のうち1つにおいて、極端に乾燥した超高圧の蒸気によって配管に生じた過剰な震動と、支持構造物の不十分な強度が摩耗の原因であるとした。配管に対する震動や摩耗は他の原発でも見られる問題だが、サンオノフレ原発で発生したような震動は業界でも例がなかった。
原発の20%を保有するSCEとサンディエゴ・ガス&エレクトリックは数年前、蒸気発生器の交換に7.8億ドルもの資金を投入しており、その費用は電気利用者たちにより現在も負担されている。」

 (C) 2013 All rights reserved. OBN

推論:「侵略の定義」発言を巡るワシントンポスト紙の社説と対する反論の真相

「戦前の大帝国のノスタルジアに浸るようでは、国内の改革を推し進める力も、疑り深い周辺国を納得させる力もすべて、これを前にかすんでしまう。」

4/27付ワシントンポスト社説『歴史を直視できない日本の安倍晋三』(仮訳)より

ワシントンポスト紙が与えた安倍政権への“評価”

ワシントンポスト紙(以下、WP紙)の社説が出されてからというもの、各紙一斉にWP紙が安倍総理を「歴史に向き合えない総理」として"批判した”として報じているが、一方で、同紙が総理を評価している点については、ほとんど言及がない。だが、同紙は批判一辺倒で社説を出した訳ではない。

改めて社説記事を全訳して見てわかったことだが、WP紙は批判するだけでなく、讃えるべきは讃え、また安倍総理の行動の中に合理性を見る点についても明確に評価している。WP紙が批判しているのは、それら功績や合理性が、「歴史を直視できないこと」により”かすんでしまっている”ということなのだ。

また安倍総理への「評価」の中でWP紙が言及していることにも注目が必要だ。

まず、同紙は次のように、安倍総理の大胆な①金融改革を評価している。

安倍氏は瀕死の日本経済を改革するために様々な大胆な取り組みを行った。

次に、②TPPへの参加を決めたことを評価している。

コメ農家などの強力な利益団体をものともせず、日本経済の活力となり得る米国その他太平洋諸国との自由貿易協定への参加を決めた。

さらに、③防衛費の増額を性急に行わなかったことも評価している。

また、防衛費の増額という妥当な要求についても慎重な姿勢を崩さなかった。

WP紙の「評価」は実はまだ続く。

WP紙は後半の結びの前に、安倍総理が行おうとしている④自衛隊の"近代化”の合理性と、連合軍に⑤"押し付けられた”平和憲法が集団的自衛に対応していない点について総理が疑問を呈している合理性を評価している。

中国や北朝鮮の国防費の増額やその強硬姿勢を前に、安倍氏自衛隊の近代化を目指すのはもっともなことであるし、大戦後、アメリカの占領軍により押し付けられた“自衛”憲法が、同盟国に対する十分な支援を供与できるかという点に疑問を呈するのも、もっともである。

冒頭で紹介した同紙の安倍氏に対する以下の批判のフレーズはこの後にくる。

しかし、未だ多くの有権者が懐疑的である中にあって、戦前の大帝国のノスタルジアに浸るようでは、国内の改革を推し進める力も、疑り深い周辺国を納得させる力もすべて、これを前にかすんでしまう。

つまり、WP紙は「批判」しているのではなく、「エールを贈っている」のである。

WP紙はその「批判的」とされる社説で、安倍総理の行ってきたほとんどの政策や行動を支持し評価している。その上で、「だが」歴史修正主義的傾向が「惜しい」。「それさえなければ」という評価をしているのである。つまり、「安倍政権は米側の意向に”ほぼ満点”で従っている」と暗に褒めちぎっているのである。

一見、的外れな佐々江駐米大使による「評価に対する反論」

4/30付ワシントンポスト社説に対する佐々江駐米大使の反論(仮訳)

さて、安倍総理への「批判」社説が実は「評価」だったと仮定すると、佐々江駐米大使が行ったこの反論寄稿は、いよいよ的外れということになる。佐々江大使はその反論を「歴史を直視できないこと」その一点に絞った。その他、WP紙が「評価」した点には一切触れていない。つまり、言ってみればWP紙がくれた「ほぼ満点」の答案について異議を申し立て「ほら、満点じゃないか」と突き返したのも同じことになる。

「ほぼ満点だった」ものが「実は満点だった」ことで得をするのは誰か。という、陰謀論のセオリーで考えていくと、実はこの国際的な「評価」と「確認」の応酬によって一番得をするのは安倍総理だ。日本のマスコミは表層しか捉えず、また同胞の大使の反論について全訳掲載すらしていない。だが、4/27付のWP紙の社説に対し、わずか3日でスピード対応し、4/30付のWP紙に寄稿記事の掲載を果たした佐々江駐米大使の対応は、何かと海外批判対応が遅い日本の官僚機構にしては機敏すぎる。またWP紙側の対応もスムーズすぎる。このことに誰も疑問を抱かないのだろうか。

以下は全て私の個人的推察に過ぎないが、表面的に「批判」に見える米紙の社説が実は「評価」で、関係者の間ではそれが分かっていると仮定した場合、総理の国外での評価はアメリカに認められた日本の指導者」となる。

一方、日本では米紙の批判に敢然と立ち向かう部下(しかも元外務事務次官で省内スキャンダル後初めて駐米大使への就任を果たしたほどの実力者)がいるほど安倍氏の政権内の支持は堅い」という印象になる。少なくとも佐々江氏の「反論」が」政界に贈ったメッセージは強烈だろう。

さらに、一般的な効果の側面もある。


一般は今回の一連の出来事を、米紙の批判にもめげない安倍政権として頼もしさを感じることだろう。無論、一部左派勢力は浮き足立つだろうが、実際は「批判」でないのだとしたら、単に踊らされただけということになる。

実像は、国内外において安倍政権への支持は盤石ということなのである。

最後に

参院選へ向けて、安倍政権はあらゆる手段で圧倒的な国民的支持を獲得しようとしている。WSJ紙が看破したように、「主権回復の日」の制定もそうだし、国民栄誉賞のW受賞もそう。猪瀬知事の失言を逆利用した外交アピールもそうだろう。いずれも少し裏を読めばその意図など透けて見える。

「すべてを合理的に疑ってみる」
―この姿勢を貫くと、よく騒がれている様々な事象の裏に冷徹な意図が見えてくる。WP紙の社説にしたって、報じられていない内容を把握してみると、まるで報道とは異なる洞察が得られる。そこから生じる合理的な疑問が辿り着く帰結は、信じてよいものだと思う。

人の基本的な心理として、5つ褒められることがあって1つ批判されることがあったら、そのダメージはさほど大きくない。その批判される1つのことがよほど本人にとって「重大」でないかぎり。WP紙社説の場合、5つの点で安倍政権を「評価」しており、1つので点で「惜しい」と指摘しているに過ぎないのだ。その点を誤魔化されてはならない。

本当に批判したいと思う勢力だったら、評価と批判の割合で批判を多めにするか、より重大性のある項目で批判することで、評価を帳消しにするだろう。しかしWP紙の記事には「これさえなければ」「惜しいのに」という思いが滲み出ている。つまり、WP紙は安倍氏足りない点を指摘しているだけなのだ。この推論の起点はそこにある。

むしろ安倍政権がどのくらい米国の思い描いている通りに動いているか、そこを国民は危惧すべきだろう。