新訳: "Forbidden Colours" by David Sylvian & Ryuichi Sakamoto
邦画『戦場のメリークリスマス』の本編では決して使われることのなかった隠れた名曲がある。デイビッド・シルヴィアン(David Sylvian)という英国アーティストが、坂本龍一作曲の『戦場のメリークリスマス』(原題「Merry Christamas, Mr Lawrence」)に歌詞をつけ編曲したもので『Forbidden Colours』(邦題「禁じられた色彩」)という曲だ。
国内販売のサントラには、どうやらこの曲は含まれていなかったようだが、俺が在学時代にアメリカで購入したサントラにはこの曲が含まれており、俺は長年、なぜこの曲が本編で使用されなかったのか不思議に思っていた。
ネットでの情報を探ってみると、この曲は三島由紀夫の『禁色』にインスピレーションを得たもので、同性愛を「禁じられた色彩(いろどり)」として歌った曲だという。ならば、この詩が映画本編で使われなかったことも納得がいく。訳詞はあるようだが、個人による要約でしかないことがソースを辿ってみてわかった。
大島渚監督はあらゆる形の情愛を分け隔て無く描くことで有名で、同性愛を題材にした作品も多いが、『戦場のメリークリスマス』は単に「禁じられた色彩」=同性愛を扱った映画ではないと思う。また単なる反戦映画でも、単なる戦争映画でもないと思う。
俺はこの曲を繰り返し聴くうち、この曲が映画本編で使われてもおかしくならないテーマを感じ取った。それは、「禁じられた色彩」=戦時における人間愛の発現。これこそが「Foribidden Colours」なのではないかということ。そしてこの色は戦時には交わることが禁じられ、戦争が持つ色の無い、灰色の世界を彩る色彩(いろどり)の誕生こそが、戦時に禁じられる人間愛の発現なのではないか、そうした戦時における、人としての当然の心の葛藤を訴えたいのではないか。
こういうまったく自己(勝手)流の新解釈で、唯一の既存の和訳(要約)といえるものを練り直し新訳としてみた。ただ、キリスト教の禁忌(タブー)としてのソドミー(男色)を唄うくだりもあるので、こうした部分も自己(勝手)流でかなり強引にアレンジしてみた。
新訳 by GivingTree
手にした傷は
癒えることはない 信じてさえいれば
報われると思っていた 越えがたい距たりがある 教えに従うべきか
衝動に委ねるべきか この愛は
禁じられた色彩を纒う けれどもこの生は
信じている 無意味な歳月が
あっという間に過ぎさり 無数の人々が喜んで
命を捧げていく それでも何も
残らないのか わきおこる衝動を
抑えようと 心の奥深くに
気持ちを沈める この愛は
禁じられた色彩を纒う けれどもこの生は
やはり信じている 己の拠って立つ所すら
信じきれないのに 何もかも盲目に信じこもうと 答えのない問いを
繰り返す 越えがたい距たりを感じる 教えに従うべきか
心変わりすべきか この愛は
禁じられた色彩を纒う けれどもこの生は
信じている
この愛は
禁じられた色彩を纒う
けれどもこの生は
やはり信じている
オリジナル歌詞 by David Sylvian(一部耳コピ)
The wounds on your hands never seem to heal I thought all I needed was to believe Here am i, a lifetime away from you The blood of christ, or the beat of my heart My love wears forbidden colours My life believes Senseless years thunder by Millions are willing to give their lives for you Does nothing live on? Learning to cope with feelings aroused in me My hands in the soil, buried inside of myself My love wears forbidden colours My life believes in you once again I'll go walking in circles While doubting the very ground beneath me Trying to show unquestioning faith in everything Here are you and i, a lifetime away from you The blood of christ, or a change of heart My love wears forbidden colours My life believes My love wears forbidden colours My life believes in you once again