検証:米大統領が米国の国際刑事裁判所「復帰」を命じる大統領令を発したという情報の真偽(検証Ⅰ)
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Ⅰ.ソース内容の検証
「オバマ大統領が国際刑事裁判所復帰を命じる大統領令に署名した事実はない」という結論を導かせるに至った"Veterans Today"(以下、VT)の記事の内容は、何者かによっていちやはやく仮訳されている。「何者」といっても、一種の機械翻訳なのだろう。各国の有志が集まって簡単なGoogle翻訳などを元に仮訳を作り、掲載するサイトらしい。しかし、労作なのだろうけれどもこのお粗末な内容のままそれを事実だと解釈されては、流石に原本著者が哀れなので、以下改訳した上でその内容の問題点を適宜指摘する。
仮訳:VT記事の改訳
オバマ大統領が、国際刑事裁判所(ICC)に再復帰("rejoin")する大統領令に署名するという驚くべき行動に出た。この機構は米国が創設したもので、国際法の執行と戦争犯罪の処罰化を目的としている(1)。
今後、これらの者は逮捕される可能性がある。その対象は、連邦議員、軍人やCIAの人間にまで及び、これら殆どの人間がそのような犯罪に手を染めていると思われている点で奇妙な一致をみている。
私がこれまで読んだ文書のなかでも最もトリッキーな部類に入るこの文書を注意深く読むと、現職の連邦議員は逮捕を免れることになっている。軍人の保護に関する箇所は、さらに難解に書かれていて、全く不明瞭だ。
この文書により、オバマ自身にもリスクは生じる。だが、それはアッシュクロフト、ゴンザレス、マケイン、リーバーマン、ブッシュ親子、そしてチェイニーやその他の数千人に及ぶ戦争犯罪人らが抱えるリスクの比ではない。
訳注:
(2)表現に若干難がある。アメリカは2000年12月31日にクリントン政権がローマ規程に署名したが、当時のクリントン大統領の勧告に基づき2002年5月にこの署名を撤回する書簡を送付している(だたし、受理されていない)。これを単に"left"(離脱)としてよいのか疑問。また後半の「保護するため」という部分は、著者の主観でしかない。
(3)事実誤認。ICCはその案件の多くを加盟国や周辺国の付託によって行っており、それがアフリカ周辺諸国に集中しているだけのこと。アメリカの政策に呼応して国連安保理でこれまで案件が付託されたのはスーダンとリビアの2件のみ。ICCは少なくとも7件の案件を抱えており、その実数としてもこれは少数に属する。またアメリカ単独で非締約国としてICCに案件を付託したことは一切ない。
以上で記事本文の内容についての検証を終える。
問題の大統領令についての検証は次の「検証Ⅱ」で述べる。
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