GivingTreeの雑記帳 [はてな版]

seeking for my another sky─それは、この世界そのものだと気付いた

外交:具体論(後)常軌を逸した敵性国家に対する有効な備えとは─総括メモ

現状の総括:日本の外交的敗北は必至か

現状は刻一刻と変化しており、日本政府が打ち出した半年間の時限的経済制裁安保理付託という方針のうち、経済制裁は時限措置なのでその限られた有効性は言わずもがなだが低い。一方で頼みの綱の安保理付託も、一筋縄でいかなくなっている。

最新の状況ではロシアが遂に中国と結束して共同決議案を提示する(毎日:(13日11時10分)に至っており、英仏が提案していた議長声明と非難決議の2段階提案(産経:12日15時57分)はこのロシアの提案であっけなく消え去った。中露の共同決議案では軍事および経済制裁を可能にする国連憲章第7章への言及が削除されており、非難のトーンを低めた非難決議案(ロイター:13日9時31分)となっている。日本が初めて「強硬」ともとれる姿勢で臨んだ安保理への付託という最後の外交手段は、決議採択を急ぐ日米の意向をとりいれたこの中露の動き(読売:13日12時33分)によって水を刺された形となった。後は日米とともに制裁決議案の共同提案国となっている6カ国がどのように動くかだろう。つまり、日本は主張を初めから明らかにしすぎたがために足元を掬われるはめに陥ったのである。中露の動きは勿論メディアが論じるような「歩み寄り」ではなく、よくいえば戦略的な妥協、悪く言えば、計算ずくの相殺である。こういう所にも日本の外交力のあと一歩及ばないところが顕著に出てしまう。国際社会では歴戦とした力の差はこうして結果として公に曝されてしまうものなのだ。

アメリカはヒル次官補が奮闘している(共同:13日12時44分)ようだが、外交面では中国の北説得に委ねるしかないせいか、中国の影響力低下を知っているのでほとんど諦めムードだ。新MDシステムの性能テストが成功したこと(読売:13日12時13分)をさりげなくアピールしてアメリカの軍事的優位性を誇示している。いまさらそれが何の意味があるのかわからないが、読売が勝手に本件とリンクさせて考えているだけかもしれない。真相は定かではない。

結局日本は、政府閣僚が国民向けパフォーマンスで述べる強硬論とは裏腹に、利害の一致した中露の強烈な連携によって厳しい外交判断を迫られる形(共同:13日12時55分)となっている。肝心のパートナーのアメリカが中国に対する強硬姿勢を日本ほど明確に表せないことと、日本が安保理か独自の経済制裁しかオプションを持っていなかったことが、今回の敗因だと思われる。まだ負けると決まったわけではないが、国連は意見調整の場だ。日本が目指していた絵が、初めから「中露による非難決議への妥協」だったとしたら大喝采だが、公に発しているとおりあくまで制裁決議なのだとしたら、日本は大きな敗北を喫することになり、ふがいのないパートナーを持ったアメリカはさらに日本の外交力に失望し、ますます老獪な中国との共存を望むようになるだろう。そうなったらまさに、安保理常任入り失敗に次ぐ日本外交の大いなる挫折である。

さて、これが最新の現状だが、この状況に“至らない方法”があったという過去に立ち戻る話の進め方はやめておこう。問題はこれから、「負け」を承知で、「日本スタンダード」の精神でどのようにこの問題に取り組んでいくかだ。日本はここからまさに、背水の陣で挑まなければいけない。

背水の陣の日本は強い:負けを承知で勝ちを狙え

まずは捨てることがある。国家としてのプライドや先進国としての優越感だ

中国に外交力で遠く及ばないのは、中国が半世紀にわたって常任理事国として国際社会の先導者たちと常に席を隣り合わせてきたからである。日本は非常任理事国としては最多の当選実績を持つが、非常任理事国としての任期はたったの2年。最多といっても、60年の歴史を持つ安保理における日本の実績はやはり少ない。そこは中国に遠く及ばないのは当然であり、相手の庭で思いっきり暴れたくらいの謙虚な気持ちで潔く負けを認めるべきだろう。

次に先進国としての中・韓・露などの途上国(準先進国)に対するケチなプライドだが、そんなカンバンは外交が全てを制する国際社会ではまったく意味をなさないので、これら三カ国にどうして日本の外交力が通じないかを国の発達度やGDPで計ってみてもしょうがない。要は外交に対する基本姿勢の問題であり、国際社会に対するシビアな視点が欠けているということなのだ。だから、国家としてのプライドや、先進国としての優越感などは、いの一番に捨ててしまうことが、次のステップに必要な心構えとなる。そんなもの、国際社会ではそれに伴う“力=能力”が無ければなんの意味もなさない。ここは、それを開き直って認めて前に進むのが肝要だろう。

安保理での敗北と、それに伴う「開き直り」の後に前提に日本がすべきことは、次のとおりだ。
一度負けたら、もう怖いものはないと知れ。

(1)決議に対する不満の表明と、独自的制裁強化(金融制裁)の発動(表明あり)
(2)“表明なし”のミサイル防衛網導入の加速(国民の不満は無視)
(3)6カ国協議からの離脱の表明と日朝単独協議再開の要求(ブラフ)
(4)要求に応じない場合、(1)の独自制裁を実行し、本当に離脱する
(5)同時に拉致問題未解決を不問にする意思の表明(拉致家族の不満は無視)
(6)日朝間協議の焦点を半島非核化とミサイル問題に集約
(7)それでも応じない場合、新たに非公式6カ国会議の招集を要請。中露を共同議長に推薦して協議再開。日本の対北制裁解除を話し合う場とする。
(8)7までのステップを経てから、防衛省昇格法案を可決しアメリカを喜ばせる
(9)昇格法案可決後、憲法改正に関する国民投票法の制定に着手。日本がアメリカなしでやる気だということを内外にアピール(アジア諸国の不満は無視)
(10)ミサイル防衛実戦配備を世界に表明

このように日本の対北制裁を既成事実化し、現在のアメリカによる経済制裁と同じレベルにまで高める。そして硬軟両方の方法で、一方では北の主張や要求を受け入れ、一方では断固として受け入れない。このような形で北に華を持たせつつ、制裁を実行するというダブルバインド方式で北を締め上げる。こちらが実質上大きな譲歩をする場合は、北にもその譲歩に応える義務がある。一度譲歩したら、次は相手が譲歩するまでなんとしても譲らず、制裁を段階的に高めていく。こうして硬軟入れ混ぜた方法で、最終的に北にモラトリアム遵守と国交正常化への道をとらせる。

その間、アメリカには中国と仲良くしてもらっておけばいい。もう腹は読めてるのだから、アメリカが日本に過度の期待をしていないことは明白。アメリカが日本を妾のように扱うとしても、妾にもプライドがあることは示す必要がある。中国と日本の間に揺れてるような間は、一度中国にべったりにさせてやるといい。そうすればアメリカは日本のよさに気付くだろう。日本には中国にないものが沢山ある。それはアメリカの国益に適っており、日本がアメリカ抜きで単独外交を展開するようになったら一番困るのは実はアメリカである。日本のアメリカに対するスタンスは、「ツンデレ」でいい。ペットだ妾だという侮辱的な表現が嫌でも、男女関係において実権は女性が握っているというのは常識。ならば、せいぜいしたたかな妾になってやればいい。これが「開き直り」だ。男性的なプライドは、ここでは無用の長物だ(実際、女性の方がプライドは断然高い・・)。

仮に日本が蚊帳の外となって6カ国協議が存続して北との協議が続いたとしても、それはそれでいいのだ。その場合は存分に交渉を進めてもらい、北への対応を残りの4カ国に任せて日本は日本の政策を継続すればいい。6カ国協議から非公式に協力な要請があるようならば、条件付でそれを呑めばいい。いずれにせよ、北は徐々に国力を削がれていき、日本は独自の政策を突然の妨害なく粛々と進めていくことができるという寸法だ。

軍備拡張はあくまで後回しで、最後の手段として徐々に段階的にその優先度を格上げしていく。軍備拡張による威嚇など、すでに相応の軍備を持っている国に対しては通用しないし、第一基本的な技術の遅れは如何ともしがたい。相手は何もせずに待っているわけではないし、軍事的脅威になる技術の開発を始めたとしてば妨害・破壊工作も活発化するかもしれない。それは国内の治安に直結する問題。いたずらに軍備拡張をちらつかせて相手を刺激すれば、相手はそれを阻止しようと動き出す。戦争を始めるのが目的なら、軍備拡張を喧伝しても構わないが、真意がそうでないなら、慣れないブラフはやめることだ。日本は最新鋭のおもちゃを持ってもそれを有効に利用するソフトパワーを持っていない。分を弁えて振舞わないと、また中韓あたりに足元を掬われることになる。そのときに国際世論を日本の批判に集中させられたら、日本はまた戦後半世紀の歴史をやり直すはめになる。それだけは避けなければならない。

国家あっての国民であり、国民あっての国家である。

いたずらに戦争に煽り立てるのは双方にとって不利益であり、また無責任である。

本当に日本の将来を思うのなら、譲るべきところで譲り、譲らないところで譲らない、またそのTPOを間違わないという技術の習得が必要だ。その鍵が「日本スタンダード」の中にあると俺は信じている。日本を希望の未来に導く「日本スタンダード」は、常にそこにある。日本人はその存在を忘れてしまっているだけだ。

(了)